担当プロデューサーが語る!ミュージカル『アナスタシア』の見どころ ~プロフェッショナルたちが創り上げる舞台への想い~
こんにちは!梅田芸術劇場公式note編集部です。
いよいよ来週開幕するミュージカル『アナスタシア』、前回は作品の背景や注目ポイントをご紹介しましたが、
今回は担当プロデューサーに直接見どころをインタビューしました🎤
2020年の初演時から本作に携わっているプロデューサーなので、作品の見どころだけではなく、今回の再演に対してや舞台にかける想いなどをアツく、アツく語ってもらいました。
ぜひ観劇前にご覧いただけたら嬉しいです。
『アナスタシア』のあらすじ・注目ポイントなどの記事も併せてご覧ください👇
まず『アナスタシア』という作品は、音楽、ストーリー、ダンス、衣裳、セット、そしてキャストと、全ての要素をお勧めできる作品です。
こう言い切れる作品はなかなかないのですが、『アナスタシア』は、まさにそのような作品だと思います。
初演時は公演がほぼ中止に
私は2019年に梅田芸術劇場に入社したのですが、その半年前からインターンをしており、その時からこの作品に携わっていました。
初めて担当した日本初演の大型ミュージカルだったのですが、2020年3月の初演はコロナ禍により多くの公演を中止せざるを得ませんでした。
2020年の日本初演当時、この規模感の作品は珍しく、またブロードウェイでの上演後すぐに日本に上陸したということも目玉の一つでした。
例えば舞台セットはドイツから船で輸入したり、衣裳もデザイナーが何度も来日して、布やボタン一つとってもそれぞれの国から取り寄せたりと、あらゆるこだわりが詰まっていました。
稽古場には、演出家、振付家、音楽監督といったクリエイティブチームや、劇場仕込みを行うテクニカルチームなど、初日に合わせて海外から20人以上のスタッフが来日していました。
しかし、開幕直前に緊急事態宣言が出て、初日を観ることも叶わず帰国することになってしまったのです。
ミュージカルは、企画段階からかなりの年月をかけて制作されるものです。
それがいよいよ形になってお客様にお見せできる、という段階で、公演の中止を選択せざるを得ないという状況でした。
直前まで来ていたのに、あえなく零れ落ちていってしまったという印象です。それ以来、いつか必ず、と再演を期待する想いは強かったです。
これは、プロデューサーだけでなく、キャスト、スタッフ全員が同じ想いだったと思います。
今回は初演から続投するメンバーに加えて、新しいキャストやスタッフも参加しています。
私自身も、いよいよリベンジできるんだ、と本当に嬉しかったですし、稽古場の雰囲気からも全員の想いが感じられます。
稽古場の様子
稽古場はとても良い雰囲気で進んでいます。『アナスタシア』はダブルキャスト・トリプルキャストの組み合わせも魅力の一つですが、キャストがそれぞれの強みを活かして取り組んでいる印象です。
この作品はブロードウェイで上演された作品で、いわゆる“レプリカ作品”になります。(脚本・音楽だけでなく演出・衣裳等も含めたすべての要素が一括でライセンスされた作品。言語が日本語であること以外は、ブロードウェイと“同じ”です。)
照明や音楽の都合によりキャストの動きに決めごとがあることは事実なのですが、決めごとに対してのアプローチや、どのように役を作っていくのかについては、個々人にかなり委ねられています。
今回来日されている演出補のサラ・ハートマンさんは、ブロードウェイ公演より前のトライアウト公演から長らく本作に関わっており、直近では全米ツアー公演も演出を担当されていました。
全米ツアーも経て、初演時から大きくアップデート出来ている部分も多くあります。
サラさんはキャストの個々のキャラクターをよく見ていて、例えばノート(稽古終わりに演出家がキャストにコメントを伝えること)では、
「これは○○さんの演じるキャラクターに向けてのアドバイスであって、別の人にはむしろそういう風にやってほしくないことです。だからあえて他のダブルキャスト・トリプルキャストの方は聞かないでほしい。」
と仰っていたこともありました。
キャストは、自由な雰囲気で新たなアイデアを自分から出して、演出家と相談しながら役を深めています。
私は稽古場ですべての通しを見ていますが、すべての回、すべての組み合わせで異なっていますし、キャスト自身も化学反応の違いを楽しんでいます。
そして演出家も振付家も、キャストからのアイデアを求めているので、いいコラボレーションが出来ているなと実感しています。
”レプリカ公演”というと、海外チームから与えられたものをそのままやっていると思われがちですが、キャストもスタッフも「コピー・ペースト」するような人たちではありません。
他にはない“日本の『アナスタシア』”ができているのではないかと思います。
プロフェッショナルたちが創りあげる舞台
『アナスタシア』は、キャストもスタッフもプロフェッショナルの集団です。
表に見えている以上に、多くの人が、多くの時間をかけて、作品の上演が叶っています。
例えば、プログラムの最後に載っている関係者のクレジットを改めて見ると、“こんな役割があるのか”“こんな技術を持った人がいるのか”など、
いろいろな人の力が結集して舞台が出来ているということを感じていただけるのではないかと思います。
さらにこの作品はブロードウェイで上演された作品なので、海外のクリエイターと一つ一つ会話しながら「日本版ではどういう形が良いのか?」ということを、かなりの時間をかけてコミュニケーションを重ねてきました。
プロデューサーは、舞台を作り上げる演出家ではありませんし、舞台上に立つキャストでもありません。
ましてや、衣裳、舞台セット、オートメーション機構といった、テクニカルのプロフェッショナルでもありません。
ですが、それぞれのセクションの打ち合わせに同席し、試行錯誤しながら、日本公演のためにベストな方法を模索してきました。
大勢のプロフェッショナルたちを繋ぎ合わせ、舵を取るのが役割だと思っています。
公演公式Twitterでも作品の裏側を紹介する“アナスタシア通信”を投稿しているのですが、
作品が出来るまでの過程についても知っていただくことで、より深く作品を理解して好きになっていただきたい、という個人的な想いから行っています。
演劇は、舞台上では出来上がった状態で目に見える綺麗なものだけをご覧いただきますが、
その裏には多くのプロフェッショナルがいることが大きな魅力だと思っており、色々なセクションの視点から紹介することを心がけています。
例えば、今は稽古場での稽古と並行して、劇場では仕込みをしているのですが、普段は表に出ることはないテクニカルな技術を持つ方々も、初日の幕を開けるための大切な役割を果たされています。
各セクションがそれぞれにこだわりを持って力を合わせ、一つの舞台を作り上げるというプロセスが、私は大好きです。
こだわりの集合体を皆様にご覧いただくことで、これだけ大勢の人たちが関わっていて、良い舞台を届けようとしているということを実感していただけると思うのです。
振付について
今回の作品では、いわゆる「アンサンブル」と呼ばれる色々なシーンで様々な役柄を演じる出演者が、男女7名ずつのシンガー枠とダンサー枠に分かれており、シンガー枠が3名、ダンサー枠が4名の構成になっています。
そして、いざという時に備えて「スウィング」も常にスタンバイしています。
シンガー枠も踊りますし、ダンサー枠も歌いますが、
少人数でパフォーマンスしているのにも関わらず、専門性を発揮し重厚な音楽や華やかな踊りのある作品になっていることに、きっと驚かれるのではないかと思います。
2幕の大きな見せ場であるバレエのシーンでは、本物の「白鳥の湖」を劇中で観ていただくことにこだわって、普段はバレエ団で活躍されている方にご出演いただいています。
実は、今回も初演時にも来日されたオリジナルの振付家ペギー・ヒッキーさんを招聘する予定だったのですが、残念ながら今年の1月にご病気で亡くなられてしまいました。
初演の際からペギーさんは、「世界各国で上演されている『アナスタシア』の中で、日本のバレエが世界一」だと話されていました。
ペギーさんのご逝去に伴い、今回来日されたのは、振付補のデニス・ベスケさんです。
バレエに関しても、もちろんペギーさんの作った振付として決まっている動きがあるのですが、稽古を見たデニスさんが、
「バレエダンサーの皆さまがとても素晴らしいので、各々のスキルを活かしてバレエの振付に自由に取り入れてほしいし、きっと天国のペギーも、この場にいたら喜んでそう言うと思う」と仰ってくださいました。
ダンサーのオリジナリティとクリエイティビティを尊重したシーンとなり、キャストも毎回違うアプローチをしています。
音楽について
1幕はロマノフ王朝を彷彿とさせるロシア音楽ですが、2幕になると一気にパリの華やかな音楽になります。
前述した2幕にバレエを観劇しに行くシーンでは、アーニャ・ディミトリ・グレブ・皇太后という4人の主要キャラクターの心情と、
チャイコフスキーの「白鳥の湖」の音楽とバレエがミックスされていて、目にも耳にも美しいシーンが続きます。
そして振付と音楽がチャーミングに融合している点も見どころの一つです。
例えば「♪やればできるさ」という曲は、ディミトリとヴラドがアーニャを“アナスタシア”に仕立て上げようとするシーンなのですが、
お姫様らしい作法を教え込んで「コップを持つときに小指をピン!と上げる」という時に、効果音のように「ピン!」という音がオーケストラで入っていたりして、気持ちがワクワクします。
最後に
『アナスタシア』は本当にいい作品で、自信をもってお届けできます。
「アナスタシア」の語源には、「よみがえり・復活」という意味があるのですが、当時ペテルブルグに住んでいる市民にとって「皇女アナスタシアが生きているかもしれない」と思うことは、一つの希望になっていたそうです。
それは今の私たちにも繋がると思うのです。2020年初演時の公演は途中で終わってしまったけれども、
今回の再演が決まってからは、私も『アナスタシア』があるから頑張ろうと思えたし、希望になりました。
演劇界に限らず、このコロナ禍を通して、どうしようもない悔しい思い、やるせない思いをされてきた方はたくさんいらっしゃると思います。
『アナスタシア』の復活が、お客様にとっても希望を感じていただける作品になったらいいなと思います。
冒頭でもお伝えしましたが、『アナスタシア』は全ての面からお勧めしたい舞台です。
視覚的にも華やかで、作品について特に予習しなくても楽しめると思いますし、はじめて観るミュージカルにもぴったりです。
本公演は4歳以上からご観劇できますので、ぜひお子さまにも観ていただきたいです。
私も稽古場で数えきれないくらい観ていますが、未だに飽きる気配がありません。それだけ作品に魅力があるのだと感じています。
末永く愛される作品になることを心から祈っており、多くのお客様にお届けできたらと思っています。
ミュージカル『アナスタシア』公式Twitter・Instagramでは、作品の裏側をご紹介する#アナスタシア通信もお届けしています!是非チェックしてくださいね♪
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