日英共同制作ミュージカル『Pacific Overtures(邦題:太平洋序曲)』がロンドンでいよいよ上演!~初の海外ステージに挑む大野拓朗さんにインタビュー~
こんにちは!梅田芸術劇場公式note編集部です。
この冬、英国ロンドンのメニエール・チョコレート・ファクトリー劇場で、
梅田芸術劇場とメニエール劇場の共同制作ミュージカル『Pacific Overtures(邦題:太平洋序曲)』英国キャスト版が上演されます!
本作は、黒船来航を機に幕末の日本が鎖国を解いて西洋化へと向かう動乱を、巨匠スティーヴン・ソンドハイムの楽曲で描いた大作です。
1976年にブロードウェイで初演されてから、アメリカ、イギリス、そして日本でも複数回上演されており、題材の珍しさと耽美な楽曲が際立つ作品です。
2023年3月・4月には、梅田芸術劇場とメニエール劇場の共同制作として日本キャストによる日本公演を上演し、好評を博しました。
今回の英国公演は、2021年にソンドハイムさんが逝去してから初めての『Pacific Overtures』英語圏での上演となるため、ロンドンの演劇界でも大きな注目が集まっており、既にプレビュー期間中のチケットは完売。
この冬の話題作となっています。
今回は、英国キャスト版の一員として、香山弥左衛門役で初の海外ステージに挑む大野拓朗さんに、現地にいるプロデューサーがお話をうかがいました。
ぜひ現地の温度を感じていただけたら嬉しいです。
――11月25日のプレビュー初日まで、あと1週間になりました(※インタビュー当時)。10月下旬に渡英され、稽古が開始してから3週間ですが、今どんなお気持ちですか?
「もう2カ月は経っているかと思うくらい、一日一日の密度が濃いですね!
よく3週間でここまで来たなという感じはしています。
日本版があったとはいえ、日本とはステージの形(※英国版は、ステージを挟む両側に客席があるトラバースステージで上演)、サイズ感も変わるので、皆で一からここまで作り上げたなと感じています。
そして自分自身もよく頑張ったな、と。それだけは褒めてあげたいです。
ロンドンに来てすぐの時は、台詞の言い方、一つ一つの単語の発音の仕方すらままならない状態で始めて…そこから今は考えずとも口から台詞が出てくるようになって、皆にも100%聞き取れるようになったと言われるところまできたので。
ここからはブラッシュアップして、発音もさらに向上させたいし、芝居も深めていきたいですね」
――稽古が始まってからの3週間、異国の地での現場を経験して、大野さんの中で何か変化はあるのでしょうか?
「意外と、言語が違うだけで日本もイギリスも変わらないな、という印象が自分の中ではあります。
イギリスの舞台…!と構えていたところがあったのが、一人一人が一所懸命に取り組み、日々挑んでいく、という、ものづくりへの向き合い方や、キャスト同士の触れ合いも、変わらないですね。
この時期は皆こういう風に思うよな、とか、日本の現場にもこういう人いるよな、とか同じですね。
日本人が英語を喋れたら、世界に出ていける日本の俳優はもっと増えるのにな、と思います」
――大野さんの場合、英語が元から話せたわけではなく、勉強なさったのですよね。第二言語での芝居は真のチャレンジですよね。
「英語の勉強は、30歳から始めたんです。努力すれば、そしてタイミングが来れば、叶うんだなと思いました。
タイミングが来ても、その時に努力していなかったら、逃してしまうわけなので、やりたいことがあるならば、思い立った時から準備をしておかないといけないと思っています」
――イギリスでの稽古の進め方に、日本との違いはありますか?
「時間を押すことがない(笑)。しっかりとティーブレイクを15分とったり、終わりも18時を過ぎたら、それ以上はやらないです。
もうちょっと残ってここやらせて!っていうのがないですね」
――カンパニーの皆さんの雰囲気の良さが伝わってきますが、皆さんとはよくコミュニケーションをとられているのですか?
「稽古終わりに、近くで一杯飲んだりとかしていますね。それより僕は、家に帰って台詞の練習をしていますが。
カンパニーの中だと、万次郎役のJP(ジョアキン・ペドロ・ヴァルデスさん)が、稽古初日からすごく気にかけてくれています。本読みの時も隣に座ってくれたり、分からないことは何でも聞いてこい、と何度も言ってくれています。
他のメンバーもですが、彼には特に支えてもらっています。JP とは昼休憩中に一緒に散歩したり、休日にも会っていますね。この間は、ビールを飲みながら、一緒にテムズ川沿いを4時間も歩きました。」
ここでインタビューの途中で、偶然、演出家のマシュー・ホワイトさん、音楽監督のキャサリン・ジェイズさんが通りがかり、直前にやっていた通し稽古の感想を大野さんに伝えていきました!
マットさん「(直前の通し稽古)Well done!本当に素晴らしかったよ。通しをやる度にどんどん言葉がクリアに聞こえて、そして感情表現も美しくなっているよ」
キャシーさん「天狗にならなければ大丈夫よ(笑)」
――マットさん、キャシーさんのみならず、クリエイティブのみなさんが口々に、大野さんの成長ぶりを話していますよね。
「自分の英語が、自分の言いたいニュアンスに沿って言えているかが自分自身で客観的に判断できないから、周りから褒めてもらったこと、言ってもらう言葉を信じるしかないですね。」
――英語での歌唱方法は、日本語で歌うのとは違うのでしょうか?
「違いますね。日本語は後ろにこもった感じで喋る言語なのに対して、英語、特にイギリス英語は、前にあてて喋るんです。
日本語の感じで歌ってしまうと、音がこもって、単語の発音が変わってきてしまう。前の方で歌うことはやってきていないので、その筋力が育っていないので、鍛えていかないといけないです。元々言語が好きなので、研究しがいがありますね。」
――お話をうかがって、英語での稽古は本当にチャレンジの積み重ねだったのだと感じました。
「最初はすごいストレスでした。でも嫌なストレス、もうやりたくない、という感じではなく、あー疲れた、って頭が疲れる感じです。やんなきゃ、練習しなきゃ、って日々この作品のことだけを考えて生活しています。
今はだいぶ余裕が出てきましたが、稽古が終わって帰って、ちょっと寝て、ごはん食べて、台本と睨めっこして、1時か2時に寝て、という生活ですね。」
――日本での稽古の疲れ方とは違いますか?
「最近の疲れ方は日本の稽古の時と同じ感じですね。日本の時も、僕は稽古では毎日疲れていたので…疲れやすい体質なんですよね」
――毎日全力投球をされているということですね。
「良く言うとそうですね(笑)」
――日本人として、この作品、このカンパニーに参加されることには、大きな意味があると思うのですが、どのようなお気持ちですか?
「この作品は、日本が舞台ですが、アメリカで作られたので、日本と西洋の文化が入り混じった作品です。
今回は、出演者がほぼイギリス在住のアジア系俳優ですが、その中に日本人がいることで説得力が出るし、そしてアジアの国々の中にも文化の違いが出ているのが興味深い。作品の枠を超えて、文化として面白い作品だなという感覚があります。
日本人、大和魂の代表として、出演できるのは責任重大だとも思うし、その責任が心地良く、他の人にはできない自分にしかできないことだと思います。自信を持って皆さんにお届けしたいなと思います。」
大野拓朗さんのインタビュー、いかがでしたか?『Pacific Overtures』英国公演が待ち遠しいですね。
次回はプレビューの様子を現地からお届けしたいと思います。お楽しみに♪
『Pacific Overtures』英国公演の様子は、梅田芸術劇場公式X(旧Twitter)で随時お届け中!ぜひチェックしてくださいね。
https://twitter.com/umegei_jp
作品紹介やあらすじなど、日本上演時の『太平洋序曲』の過去記事もあわせてご覧ください👇